「おったんじょうびっ、おめでとーーーーーっ!!!!」
パーン!
クラッカーが弾ける景気良い音が響く。
それを向けられた当の本人の神田はというと、
「…………………は?」
超迷惑そうだった。
―Episode IF #02 Congratulations on friend's birthday.
う。予想外…というか、予想通りというか…の神田の反応に
クラッカーを持ったままどうしたらいいか判らなくなってしまった、私。
これじゃ、私一人でバカみたいじゃないか!
大体、何その、おかしな発言聞いちまったぜ、的ななんともいえない表情は。
周りに散ったカラフルな紙吹雪とミスマッチすぎる。
う、覚悟してたけど、本当ノリ悪いな!
もっとこう…
わーい、ありがとう☆
…まではいかなくても、それらしい対応してくれたって…
まあ、無理か。神田だし。
折角のお祝いの席だし、広い心を持とう、うん。
スマイル、スマイル!
「だから、誕生日、おめでとうって…」
「誰のだよ」
「誰のって…神田だよ、神田! 大体、この流れで普通、他の誰かの誕生日なわけないでしょうが!」
「何言ってんだお前。馬鹿か」
「馬鹿って何だー! 馬鹿って言うほうが馬鹿なんだぞ! このうましかー!(誤字じゃないよ)」
だめだ、広い心、数秒も持たなかった。
ぎゃーぎゃーいつもどおり抗議すると、怒りの表情の神田があからさまなため息をついた。
「俺の誕生日は五ヶ月も前だ。とっくに過ぎてんだよ」
「…ご、五ヶ月…?」
5ヶ月ってもうちょっとで半年じゃないか。
それはもう…ぎりぎりセーフとかいえる時間じゃないね。うん。
思わず真顔になって聞く。
「え。てことは。一体、今、私は誰の誕生日を祝っているの?」
「知るか!! こっちが聞きてぇよ!!」
あ、あれ?
ちょ、ちょっと待って!?
「か、神田の誕生日って…6月6日だよね…?」
「そうだ」
「今って…6月だよね?」
「あ゛ぁ? どういう頭してんだ、お前は」
えええ。あれ?
そんなことしても意味はないとわかっても、無意識に手で指折って数えてみる。
だって、ここに来た時の時間から考えても…
って。
あ。
今、重大な事実に気がついた。
私が元居た世界とこの世界の季節、一緒だとは限らないんじゃないの…?
はははは、すみません。
そんなことすっかり頭にありませんでした。
私の表情が明らかに変わったのに気がついたのか、
神田がまたため息をついた。
う。今度は何もいえない。
そうだよね〜、自分の誕生日こんなに間違って祝われちゃったら気分も悪くなるよね。
「その…なんていうか、ご、ごめん…」
「………判ればいい」
「でも、そうか。なーんだ。じゃ、プレゼント無駄になっちゃったなー」
折角、神田が外出してるときを狙ってこっそり部屋の外に置いておいたのに。
誕生日とか特別なイベントでもない限り、そんなもの一気に不審物扱いだ。
私の呟きが聞こえたらしい神田が訝しげに聞いてきた。
「……プレゼント?」
「うん。ははは間抜けだねー。もし良かったらそのまま飾っ…」
「そうか。、あれはテメェの仕業か」
ひぃ…!?
ギンッと効果音が付きそうな勢いで神田に睨まれた。
心なしか、髪の毛が逆立ってる…よ!?
「え!!? な、何、何!? もしかして気に入らなかった?」
「…気に入ると思うのか?」
「いや、だって。神田、部屋に花飾ってるって聞いたから、花好きなのかなって…!!」
「限度を考えやがれ! アレは好きとか以前の問題だろうが!!」
う、嘘?
そ、そんなに駄目だった!? あれって?
なるべく豪華、かつ日本人らしい祝い方! を考えに考え抜いた末の最高傑作だったんだけど。
まあ、言葉では説明し辛いので、映像で思い出してみると。
つまりこういうの
↓
(神田の自室前にて撮影)
………。
うん。ごめん。
これは、怒るよね。
私だって、帰ってきて自分の部屋の前にこんなん飾ってあったら、普通にびっくりだよ。
何のテロかと思うよ。
最初に置いた時は『お祝い事にしてはちょっと地味かな?』なんて思ったりもしたけれど。
改めて考えてみたら、ちょっと面白いくらいの騒々しさだ。
何だ、この毒々しいまでの派手さは!
作っているときは必死だったから、感覚が麻痺しちゃって気がつかなかったんだなぁ。
しかし、どうせならこれを初めに発見したときの神田のリアクションも見てみたかったな。
あ、しまった、カメラとか仕込んでおけば良かった…!
まあ、すっごく機嫌が悪いだろうな、というのは安易に想像がつくけれども。
ティムキャンピーとか偶然通りかかってたりしたら、映像だけは見れるんだけどなー。
うん、万が一ということもあるし。
後でアレンにお願いして確認させてもらおう。
「道具とか借りて作ってたら、科学班の人達が興味持っちゃって。
で、いろいろ手伝ってくれたりしてるうちに…いつの間にか一大イベントに」
「揃いも揃って馬鹿の集団だな」
考えて見れば、その中の誰一人として私の根本的な誕生日間違いを指摘してくれなかったんだな。くそう。
そういう私も浮かれてて、まったく気がつかなかったわけだけど。
ちょっと文化祭気分で楽しかった、なんて言おうもんならどんだけ馬鹿にされるか判らない。
ちなみに寄贈に『友人一同』と入っているのは、自分ひとりだけでお祝いするのもなにか気が引けたからだけであって。
断じて、皆を共犯にしようとした訳では…ない。よ(目をそらしながら)
「ところで」
「な、何? 神田」
「お前、…俺の誕生日なんて、誰に聞きやがったんだ…?」
ひぃ!?
な、なんかオーラが。怒りのオーラが出てるんですけど!?
目が光ってるよ!
「ら、ラビ…?」
「そうか。アイツか」
そのまま、ゆらりと黒い影を背負いながら廊下を歩いていく神田。
あ、あまりの恐怖にうっかり口を割ってしまった。
正確には私がラビから無理矢理聞き出したんだけど…。
って、そんなこと言おうもんなら、きっと私の運命はここで終わる。
ごめんラビ…。
せめて骨は拾ってあげるから。
…骨が残ってたらだけど。
ともかく、神田の誕生日。
来年は間違えないようにしよう。
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◇あとがき◇
だから、これ、誰夢?
すみません、神田ファンの皆様! 私も神田大好きです!
最近の本編には神田分が足りないと思って、以前に書きかけになっていたものを仕上げてみたわけですが…
今更、神田の誕生日夢ってどんだけだよ!!!
と思う存分自分につっこんだところで。
す、すみませんでした…!
いやあ、本当はリアルタイムでお祝いする予定だったんです…
あと、実は本誌での『皆が復活記念☆おめでとー!』も兼ねていま…(もう何も言うな)
途中に出てくる花輪ですが、最初は実はこんな案もあったんですが↓
流石に思いとどまりました。
本当に良かった。危機一髪とはこのことですね。
こんな謎の文章にお付き合いいただきまして、ありがとうございました!
(H19.11.18)