時間はもう深夜。
一日の任務を終えて部屋で休もうと、食堂近くの自分の部屋に入った僕が見たものは。
「なななな…なんでここにが…!?」
何故か僕のベッドですやすやと眠る、 の姿だった。
君はきっと僕にしか手に負えない
まさかと思いつつ、おそるおそる近寄ってみると確かにそこに寝ているのは彼女で。
な、なんで?
慌ててきょろきょろと部屋の内装を確かめた。
うん、確かに僕の部屋だ。
なにしろこの部屋、元は物置だから狭いし色んな正体不明の雑貨がゴロゴロしているし、自分の部屋に間違いない。
大体、彼女の部屋は、こことは全然別の…
予想外の出来事に焦る気持ちを抑えつつ、考えられる可能性を順番にあげてみる。
僕に用事があったとか?
いや、それにしたって、ここまでしっかりと掛け布団をかけてまで寝てるわけはない。
…僕も人の事はいえないけど、はっきり言っての方向音痴は筋金入りだ。
大方、真っ暗な中寝ぼけて部屋を間違ったんだろう。
それにしても…
寝ているの寝顔を眺めると幸せそうな顔をしていて、つい自分の顔が緩むのが判る。
無邪気っていうか、無防備っていうか。
こんなに近くまで人が近づいても起きる気配は全く無い。逆の意味で心配になってくる。
なんとなく。
本当になんとなく、無意識に手が頬に触れ…って何をやってるんだ、僕は!
慌てて手を引っ込めて周りを見ると、こちらをジーッと見ているティムキャンピーが視界に入った。
「ティム、お前はまた余計なことして…撮るな!」
小声で叫んで(矛盾していると自分でも思う)空中に浮かんでいるティムを手のひらで目隠しすると、
ティムキャンピーも突然の事でビックリしたのか、手の中で暴れ出した。
…あれ? 何もやましいことしてるわけじゃないんだから、こんなに慌てる必要もないんじゃないか?
ごめん、ティム。僕が悪かった。
「……ん……」
「…? お、起きた?」
び、びっくりした…。
起こしてしまったのかと声を掛けてみても、
言葉にならないうめき声を小さくあげるだけで、いつもの元気な答えは聞こえてこない。
それにちょっと淋しく思う心半分、ホッとした心半分。
「……―――」
「……?」
「………んぁ……アレ…」
「……!!」
思いがけず自分の名前を呼ばれたような気がして、心臓が跳ねた。
ちょっとベタだけど、これは…ちょっと。
思わず聞き耳を立ててしまう。
な、
なんの夢をみているんだろう…?
「…アレ、美味しいよね、あの…なんだ、きな子、かかってるやつ…なんだっけ……?」
まあ、判っていたよ、うん、判ってた。
そういう展開かなって。
しかし、本当には何の夢をみているんだろうか。
……きな粉?
さて、どうしようか。
寝言を言うの様子を見るに、ちょっとやそっとじゃ起きなさそうだし。
それに、あんなにぐっすり眠っているのを起こすのもかわいそうだ。
他の部屋に移る…としても、今は深夜だし。
談話室で仮眠をとってもいいけど………
チラッとの方をみる。
もし、明日の朝が起きて、自分の所為で僕がそんなところで寝ているって判ったら、はきっとすごく申し訳なさそうな顔をするだろう。
ああ見えても彼女はそういうところは律儀だ。
それに…
朝、この状態を見て慌てる彼女を見るのも悪くない…なんて、ちょっと意地が悪いかな。
まあ、いつもの言動に振り回されているこちらとしては、コレくらいの意趣返しがあってもいいよね?
そう色んな言い訳を考えて無理矢理自分を納得させると、予備の毛布を引っ張りだしてきて、床に引いた。
……流石に寝ている女の人の隣に堂々と寝るなんて出来ない。
師匠じゃあるまいし。
もちろん、例えそういう状況にならないといけなかったとしても、
僕はマナに誓って何もしません。
って、僕は誰に向かって言い訳しているんだろう。
「……いや……きなこもいいけど、やっぱここは………」
相変わらずのの謎の寝言に苦笑しながら、もう一枚の毛布を引っ張って横になった。
背後には彼女の気配。
うん、一人じゃないのもたまには悪くない。
「おやすみ、」
だけど、ゆっくり眠れるかはまた別の話。
そして結局、朝はジャンピング土下座祭り。(台無し)
「ああああ! ご、ごめん、アレン…!! って、何してんの私ーー!」
「お、落ち着いて下さい、…!」
「いや、嫁入り前のいたいけな少年の布団奪っておいて、何もお詫びなしなんて私の気持ちが治まらないし!」
「嫁入り前って何。だから、僕の事だったら大丈夫だから…」
「ここはもう、あれだ! 男(?)らしく責任を取るよ、私! 結婚しよう、アレン!」
「え!? 一気にそこまで行っちゃうの!!?」
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(H19.11.24)(ちょっと改稿:H19.12.02)