Pipipipi……

う…ん。あれ?
…携帯……鳴ってる…

何処から覚醒していたのか、寝ぼけた頭でそう思った。

暗闇の中、手探りで枕元の携帯を掴…もうとした手が空振る。
って、あれ? と、遠い…なんでこんな遠くに。
手と体を精一杯伸ばしてやっと目的の物が手に触れた。
えーっと、今は…

「…に、2時…!?」

2時って、まだ真夜中じゃないかよ!
って、うわ…なんかバランス悪!!? たーおーれー!?

…おおおぉ…!?


ガッターーーーーーン






―STAGE10 







「…い、痛たたた………」

携帯を探してベッドから落ちてしまった私は、そのまま暫く動けないでいた。
痛いのもあるんだけどね。なんというか、
ああ、私ったらなんていうお約束を…!
という、ある意味嫌な感動が体を支配したというか。
寝ぼけてベッドから落ちるって、漫画じゃあるまいしさぁ!

しかし、元はといえば、携帯電話が勝手になったり、勝手に移動していたりするから悪いのであって。

って、なんだ、なんだ。
まさか無機物が勝手に動くわけないし。
怪奇現象?

やっとのことで回復して顔を上げると、目の前をスィーっと横切る金色の物体が見えた。


…ティームーキャーンーピーィー……!?


お前か! お前の仕業なのか…!?
どっから入ったのか知らないけど、
悪戯盛りもいいけど、時間と場所を考えろ…!

私が恨みがましい目で睨むと、キュ、という音と共に羽で本体を隠し可愛く揺れた。
『いやん、ユ・ル・シ・テ?』
……。

くそう。後でアレンに言いつけてやる。
ほんともうウォーカーさんったら、宅の坊ちゃん、どういう教育されているのかしらぁぁ!?(教育ママ風)

「まあ、過ぎたことはしょうがないし…って、そういえば何でココにいるの? アレンは?」

そう聞くと、そ知らぬ顔でまた空を浮遊し始めた。
う〜ん、反抗期…?
アレンはティムキャンピーがココにいることに気付いてるんだろうか。
まあ、まだ夜も遅いし、朝になったら連れてこう。




しかし、どうしよう。
変に騒いだお陰で妙に目が覚めてしまった。
それに…

「ノドが乾いた、ような気がする…」

仕方ない、食堂でなんか貰ってこよう。
って、こんな時間に誰かいんのかなぁ?
まあいいや。いなかったらいなかったで水だけでも…

立ち上がるとギシリとベッドがきしむ音を立てた。
あー夜中だから音が響くなぁ。
ドアをガチャリと開けると、廊下から夜独特のひんやりとした空気が流れてきて。
そのまま外に出ようとした私の横を金色の光が通過する。

「ついて来てくれるの?」

そう話しかけると目の前に飛んできて、その羽が起用に折れ曲がった。ガッツポーズ。
これは、『俺についてきな!』ってトコ?

う〜ん、いつもアレンと一緒にいるときも思うけど、意外に芸達者だな!








結局「付いてきな」とか言った(言ってない)割に、私の頭に乗ったままのティムキャンピーを連れたまま夜の廊下を歩く。
重いかと言われれば別にそんなでもない。
実はちょっとペット飼ってるみたいで楽しいし。
いいなぁ、アレン、いっつもこんな気分なのかな。

しかし…流石に誰もいないなぁ。
多分、科学班とかが仕事してる場所には24時間誰かが起きてるんだろうけど。
今、歩いている場所はそことはちょっと遠いしね。
草木も眠る丑三つ時ってやつだし。

あー…ここって昼間歩いているときは別になんとも思わないけど、無駄に広い上に装飾が…
なんかこう…本当に何か出そう…
なんて。
洋館風だから余計そう思うのかな?


そのうち、みんなで肝試し大会とか楽しいかもしんない。
まあ、参加してくれるかは判らないけど。


「おい」

っひゃあっほうう…!!

「……!?」

突然、後ろから掛けられた声にビックリして変な叫びを上げてしまった。
な、だ、誰?
ゆっくり後ろを振り向くと…

「ってなんだ神田か。ビックリした…」

ビックリしたのはこっちの方だ。なんだ今の。悲鳴か?」

言い返す顔を見ると、確かに珍しく目をちょっと見開いている。
わーどっきり大・成・功?
したくてしたわけじゃないけどね。

「あーごめん。ちょっと不意打ちだったから。…神田はまだ寝てなかったんだ」

「まあな。お前こそ、何をこんな時間にふらふらしてんだ」

「いや、ちょっと目が覚めちゃって。って、あ。今日は迷子じゃないよ!?

んなことは聞いてねぇよ

「なんてったって、今の私にはいつもと違って強い味方がついているからね!! 私一人だったら確実に迷子だけどね!」

「テメェには人としてのプライドは無ねぇのか」

そんなもん、とっくに捨てたね!(捨てんな)
それにしても、と神田が私の頭を見て言う。

「モヤシのゴーレムと一緒か。珍しい組み合わせだな」

まあ、ねぇ。
確かにティムキャンピーがアレン以外の人と一緒にいるのってあんまり見ないしね。
ってか。
どうでもいいけど、『モヤシのゴーレム』って、弱そうなんだか強そうなんだかよく判らない響きだな。

「まあ、さっきも言ったけど、用心棒ってとこ?」

「は?」

呆れたように聞き返す神田。
当のティムキャンピーはというと、用心棒という響きが気に入ったのか私の頭の上を上機嫌で旋回している。
まあ、妙に楽しそうだし、いいか。

「ところで、神田」

「なんだ」

「もしかして風呂上り?」

「だとしたらなんか悪りぃのか」

「いや、悪くはないんだけど…」

ないんだけどさ!
なんていうか、こう…
色っぽいな!! とか思ってさ!こんちくしょうめ(?)

黒いコートの前を開けて羽織るようにしているのはいつものことだけど。
いつもと違って髪を下ろしている所為もあって益々そう感じる気がする。
ああ、最初に見たときにちょっと違和感を感じたのは、よく見ると髪が湿ってたからなんだな。

くそう、負けた…!
いや、風呂上りでなくても常時負けっぱなしですけどね。
なんか、女として…男に色気で負けるってどうなの…!?
でも、考えてみれば、今の私の周りの男の人ってみんなそうだし。今更か。
アレンだってさぁ。

ブツブツ言っていると
神田が訝しげな表情でこちらを見ていた。
あ、いけない。
今思ってたことがバレたら、多分…いや、間違いなく私は明日の朝日が拝めない…!

「え、えーっと、ほら、髪、下ろしたとこ初めてみたから?」

「…ああ。鬱陶しいけど、仕方ねぇからな」

「濡れたまま縛っちゃうと変な癖ついちゃうしね。
 ま、なんだったらそのまま私にみつあみとかやらせるといいよ

「ぜってぇ嫌だ。っつーかこの話の流れでそこに行く意味がわかんねえよ

「いや、だって。私は見てみたいし、ふわふわウェービーの神田さん」

それ以上言いやがったらそろそろ本気で斬るぞ

ギロリと睨まれる。
なんでー、折角イメージチェンジのチャンスなのに。
なんて本当にやらせてもらえるなんて思ってなかったけど。まあ、試しに言ってみただけで。
くそう、またの機会にお預けだ!

でも、ずっと同じ位置で縛ってると禿げるって言うし、気をつけたほうがいいよ、神田

「余計なお世話だ」


と、そういえば、私、食堂に行きたいんだった。
もしかして、神田もそっちに向かう途中かな。

「神田はこれから部屋に戻るの?」

「ああ」

じゃ、食堂まで付き合って

テメェ人の話聞けよ。大体、今の聞いた意味あんのか?」

いやあ、話の流れにのせられて意外にすんなりオーケーしてくれるかと思ったんだけど…。
やっぱり途中で我に返っちゃったらしい。残念。

「いやあ…今日、さ。食堂でちょっと怖い話聞いちゃったもんだから…」

「情けねえな」

「ははは…ごもっともです」

いや、私もこの年になって流石に夜道が怖いの。とか言い出すわけでもないんだけどね。
だってさ、今唐突に思い出したんだけどさ…!
食堂でリーバーさんが言ってた話って確かこの近くじゃなかったっけ!?

「なんでも、なんかいわくつきの鏡を地下近くの部屋に保管してるんだって。科学班が研究中なんだってさ」

「だからって、なんで俺がお前についてかなくちゃなんねえんだよ」

「それは…まあ。死なばもろともってやつ?」

「死ぬならテメェひとりで勝手にしろ」

酷…!?



なんか私達の会話っていつもこんな感じだなぁ。
話していたら、今まで大人しく私の頭に乗っていたティムキャンピーが突然ふわりと浮いて。
凄い勢いで飛んでいった。
な、なんだ、突然…?

「ティム!? 何処行くのー!」

「ちょっ…テメ、引っ張んな…!!」

何処かに向かって一直線に飛んでいくティムキャンピーを追って奥へと走っていく。
神田はいうまでもなく道連れである。
なんか後ろで抗議の声が聞こえるけど、気にしないことにしよう。

もう、朝になったらアレンのところに連れてこうと思ったのに。
ここで見失ったらまた明日の朝、アレンと一緒に捜索しなきゃだし!


て、あ、いた。


「捕まえた…! もう。なんでいっつも突然飛んでくかなー。アレンも大変…」

「…おい」

「何? 神田」

「お前がさっき言ってた鏡って、これのこと…か?」

右を見ると確かに地下へと続く階段が見える。
そして、その横に視線を移すと同時に開きっぱなしの扉と、その奥に置いてある妙に古びた鏡
わー豪華。うんうん、言われて見れば確かに何かいわくありげな…
え。てか

な、なんで扉開いてんのーーー!?

知るか!!

こういう場所って厳重保管とかじゃないのかよ!
何で普通に鍵とか掛かってないわけ!?

ちょっと頼むよ、コームーイーさーん…!!

「…なんてね。まあ、そんないくらなんでも近づいただけで何かあるってわけでもあるまいし」

「…………」

まさかね。
ちょっと予想外の出来事に焦っちゃったけど、うん、そんなまさか。ねぇ?
と、視界の端に何か怪しげな光が見えて

「て、やっぱりやばいってこれ!? ちょ、神田! 退避ー退避ー!」

「んだ、退避って!…ッチ」

だって、なんかあの鏡、
今みたら変な光が!

神田は舌打ちをすると、なんだかんだで私を抱えてその場を離れようとしてくれた。
けど、ちょっと遅かったみたいで。

私たちはそのまま、鏡からあふれ出した青い光に包まれた。









…………。

どれくらい経っただろう。
まあ、時間にしてそんなに数分もたってないと思う。

光がそろそろ収まった頃に目を薄く開くと、そこは変わらず暗い教団の廊下だった。
まるでさっきの出来事なんてなかったみたいに辺りはシンとしてる。
な、なんだったんだ、今の。
あれ…なんか…さっきと微妙に風景が違う…ような。


って、
え。


目の前を見ればよく見知った。
けど、普段の生活では決して生では見ることの出来ない自分の顔がそこにあった。
その顔は酷く驚いた様子で、目を見開いてこちらを見ている。

「……私…?」

「………なんで、俺……」

呆然と呟くと、自分から聞こえたのは普段よりも数段低い声。
な、何コレ、気持ち悪!?
相手も同じことを思ったようで、思わず呟いた後に口を押さえている。

え、ええと。私が前にいるってことは
…私は誰!?

慌てて鏡の中を見ると、そこにはやはりさっき見たものと変わらない光景があった。
つまり、神田と私。と空に浮かぶティムキャンピー。
でも軽く手を上げてみると、鏡の向こうで手を上げたのは…
か、か、か、カ…
神田!!?
私が思わずその場を飛びのくと鏡の中の神田も同じ動きをした。

な…っ!?

隣ではその様子を見た私(中身は私じゃない)も絶句していて…。


てことは、あれですか。この状況は。
簡単に言ってしまえば、
俺がお前でお前が俺で?


どうしよう、何、この期に及んでこんなお約束…!!!?















バッターーーン!


大きな音をたてて、研究室に駆け込んだ。
中には驚いた様子の科学班の人達がいたけれど、今はそんなことに構っている場合じゃなくて!
し、室長は…いた!

こここここ、コムイさん………!!!

「へ? か、神田くん…!?」

ど、どどどどどどど、どうしよう…!!? コムイさーーん! 私、どうしたら!?

「え!? っていうか、ど、どうしたの、何そんならしくなく焦っちゃって!?」

「焦りもしますって! 簡単に言えば、俺がお前で、お前が俺で! みたいなお約束的なあれですよ、これー!?」

「神田くん、ちょっと! め、目が回る…!!」

思わず肩を掴んで力任せに揺すると面白い動きでコムイさんがそう答えた。
あ、コムイさんが焦ってるって結構珍しいな。いつも焦らせてる張本人だもんな。
ってそんなのどうでもよくて。

コムイさん、コムイさん、助けてください!
もし、コムイさんにお手上げとか言われたらもうどうしようもないんです!

矢継ぎ早にコムイさんに必死で訴える。

「お、落ち着いて、神田くん!? てか、助けて、リーバー班長ーー! 皆ーーー!?」

「なんかよく判りませんけど! すんません、室長、俺らには無理です

室長、迷わず成仏してください…!

薄情ものーーーー!!!

視界の端では科学班の皆さんがこちらを遠巻きに眺めている。
いや、だから室長、そんな泣いてる場合じゃないんですって!
って泣かせてるのは私か。
あー、私も良い具合に混乱してきたな!

これまた珍しく青い顔をしたコムイさんは私の後ろを見て、ぱっと顔を明るくした。

あ、ちゃーーん! 良いところに来てくれたー! 助けてー!

へ?
私はここにいるんだけど…って。
ちょっと待って。今、私の体は神田なわけで。
そうすると私の体に今入っているのは…

声に驚いて思わず手を緩めると、その隙にスルリとコムイさんが逃げた。
ちっ、素早い。
いや、そんなことよりも。

「…あ」

…!! テメェ…!

ゆっくり後ろを振り返ると、すっごい形相の《私》が仁王立ちをして此方を睨んでいた。
私の後を慌てて走ってきたのか、大分息が上がっている。
いや、なんか自分の怒りの表情を客観的に見る機会って滅多にないってか。
シュールだな、これ…!

「何、人の体で勝手に動き回ってやがる…!!」

「いや、神田も神田で、その形相はどうなのかと…!」

思うんだけど!?
思わず、引きつったまま後ろに下がる。
わ、私って結構凄い顔、出来たんだな…!
怖い、怖いって…!

と、ふと周りを見ると同じように引きつった表情の人々。
良く見ればあからさまに泣きながら祈りをささげている人もいるし。
いや、いくらなんでも怖がりすぎだろ。

「で、ちゃん、神田くん…?」

とりあえず、落ち着いた私の様子を見て、意を決したようにコムイさんが話しかけてきた。

「はい」

「なんだ」

言うまでもなく、最初に返事したのは私、後が神田。
でも見た目的には、神田が最初で私が後で、ってややこしいな!

コムイさんもそんな私達の様子にちょっと怯んだ様子だったけど、結局流すことにしたみたいだ。
流石、腐っても室長(超失礼)。
一つ咳払いをすると確認するようにこちらに向かってゆっくり聞いてきた。


「…一体何がどうなって、こうなってるんだい?」








ところ変わって司令室。
収拾がつかなくなるからと、最低限の人数のみ司令室に移った私達は、思いつく限りに経緯を説明した。

「で、結論を言えば。ちゃんと神田くん、ふたりの中身だけ入れ替わっちゃったわけだね」

「はぁ…そうみたいです」

「…ああ」


「本当に?」

流石に信じられない様子でコムイさんがそう聞き返してきた。
私だってね、信じたくないんですよ。
まあ、今は流石に信じざるを得ない状況だけど。
でも明確に証言するとなると…どうすれば。
私が内心困っていると、

「証拠ならここにある」

神田はそう言うと、周りを浮遊していたティムキャンピーを掴んでコムイさんに指し示した。
あ、なるほど!
ずっと一緒にいたティムキャンピーには映像記録機能があるんだもんね!
完全な証拠とは行かないまでも、こうなっちゃった経緯がばっちり記録されてるわけだ。

「さすが、神田、頭いい!!」

「これくらい思いつけ馬鹿。つか、テメェ、いい加減俺の顔でその間抜け面止めろ


「あー…まあ、ふたりの様子をみるに…嘘はついてないみたいだね」


うん。確かにこのキャラの違いを見れば一目瞭然だし。
やっぱり、映像記録とか見なくても信じてくれそうかな…。






結局、まだ肝心のあの鏡のことは研究途中だということで、とりあえず様子見という結論になった。
何か判ったら連絡をくれるということで、一時解散。

最初こそ私達の様子に困惑していたようだったコムイさんだったけど、
徐々に落ち着いてくるにつれて途中から何か楽しそうに見えたのは気のせいだと思いたい。
さすがマッドサイエンティスト…。
なんだ、私達は楽しい実験材料か!

と、考え事をしながら歩いていたら、いつもと違う体なのもあってうっかり人にぶつかってしまった。

「あ、すみません」

そういつものように普通に対応してしまってから軽く後悔する。
や、やばかった…?
そっと相手の顔を伺うと…青い顔で固まってる。
うん、まあそりゃあね。
私だって、廊下歩いてて神田に突然素直に謝られたらちょっと怖いしね。
白い服を着ているところを見ると探索部隊の人かな。もしもーし。

「…す」

「す?」

すみませんでしたァァァァァァァーーーー!!!! つつつ次はきをつけますだからどうか命だけは―……!!」

その人は硬直がとけた直後、こちらに向かって大声で叫びながら凄い勢いで逃げていった。

「神田…あんた、いつもどんだけ怖がられてんだよ…」

「ほっとけ」

だって、いくらなんでもあの反応はねぇよ。
しかも最後の方早すぎて判らなかったけど「命だけは」って言ったよ、あの人。





しかし、今までは混乱しすぎて気付かなかったけど、流石に神田の体なだけあって目線の高さがまったく違うんだな。
そんな場合じゃないけど背が突然高くなるって、違和感もあるけどちょっと気分がいい。

ま、なるようにしかならないし。
これはこれで新しい発見とかもありそうだ。

「うん、落ち込んでてもしょうがないし。今は今の状況を楽しもう。考えてみれば滅多にない経験だし!」

「相変わらずめでたい頭だな」

折角、人が前向きになったというのに、横を歩いている神田からは相変わらずの辛辣な言葉。
あ、ちょっと…
自分の声で容赦ない突込みを入れられると複雑…。
同じように神田もきっと辛いだろうけど。
まあ、それはお互い様ってことで。


最悪、知り合いにさえ会わなければ、ちょっと様子が変なふたり、で済むわけだし。
って、嫌だな、それも。


…可哀想だからあんまり神田のキャラに会わない行動は避けよう、うん。




あれ? あっちから歩いてくるのは…
見慣れた白い頭と黒のロングコートの姿。

「あ、。……と、神田

今、明らかに神田の部分のトーンが下がったなおい。
正直すぎるぞアレン。

アレンはこちらを見ると、訝しげな表情で近づいてきた。

わ、どうしよう。さっき決意したばっかりなのに、こんなところで速攻で知り合いに会うなんて…!
しかも、アレンって。
どんだけお約束な状況になれば気が済むんだ!?

「ふたりしてどうしたんですか? こんな時間に…」

「あ、アレン。いやあ、別に特に…」

馬鹿…!

なんとかこの場を取り繕おうと必死に言い訳を考えながら。
思わず普段どおりに返してしまって、隣から神田(外見私)に突っつかれて、我に返った。

し、しまっ…

「へ? 
…か、神田……!?

あ、アレンも固まってるし…!
そりゃそうだ。
神田っていっつもアレンのこと、頑なに『モヤシ』って呼んでるもんな…!
なのに突然、普通に「アレン」とか言われたら鳥肌もんだよね!
つーか実は私が自分で聞いてて怖かった(そこまで)




『いいかい? 教団内でこれ以上の混乱は避けたいからね。
 極力2人が入れ替わっていることは誰にも知られないようにすること!』





さっき司令室でコムイさんに言われた声が今更ながら脳内に蘇る。

ああ、コムイさん。


私、どこまで持つかわかりません…。






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◇あとがき◇

鏡については本当はもっと違うものを考えて書いていたんですが、色々、二転三転しまして、最終的にこうなりました。
最近、ちょっとシリアス寄り(あれでもシリアスだったんです)の更新が続いたので、ちょっとギャグっぽくしてみたんですが…。
内容に関しては…はははは、もう、どうしよう…!
すみません…としか。
まあ、お約束ってことで! たまにはこういうのもいいかな、と!

うん、『神田さんになったら何をしたいコンテスト』とかアンケートで募ってみるのもいいかもしれないよ!(ふっきれた)

うわあん。神田さんのファンの方、今までもそうですけど…著しくイメージを損なわれた方とかいたら本当、すみませんでした!
私も神田さん大好きですよ!そしてお約束も大好きです。(えー)

ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございました!


(H19.7.21)